藍と紅花 二大染料の魅力に迫る
古来から布や糸を染めるために様々な染料が使用されてきました。19世紀頃に化学染料が誕生するまでは、動植物から抽出した天然の染料によって色を得るとともに、その植物の効能も活用してきました。日本の色彩文化において欠かせない藍と紅花は、染料の一つでありながら、それぞれの独自の文化を築いてきました。 本展では、この二大染料の色彩と染色技法の歴史、そこから生まれた意匠や衣服を紹介し、その魅力を再発見します。
展示構成
《藍のものがたり》
藍は古くから日本で親しまれ、様々な染色技法と結びつき、布や糸などの染料として用いられてきました。本展では、江戸から昭和にいたる浴衣や型紙に加えて、当時の風俗を描く浮世絵などを中心に紹介し、現代もなお広く受容されている藍染の魅力をその技法や素材、デザイン性の要素から紐解き、注染などの技法で衣装を凝らした浴衣などをとおして紹介します。
《紅花のものがたり》
古くから貴族のあこがれの色であった紅(くれない)は、紅花による染色です。自然の草木を染料として使う草木染めのうちでも,花を使用する珍しい染めです。山形県では、現在の最上川流域で室町時代末期に栽培が始まり、江戸時代には染料となる良質な「紅餅」に加工されて主に最上川を下って酒田から船で京へ運ばれました。「最上紅花」と呼ばれ、全国の生産量の約60%を占める勢いであったといわれます。 明治時代に入り、海外からの輸入や、化学染料の普及により、京都を中心に行われていた紅花染の技法が風前の灯となり、最上紅花の栽培も急速に減退しました。昭和20年代には、米沢市内の中学校理科教師であった鈴木孝男氏が、植物としての紅花の魅力とその色素に魅せられて、栽培と染色に取り組み、その色素や染色の仕組みを明らかにしました。
《鈴木紅花研究所―鈴木孝男氏の紅花の研究と成果》
米沢市内中学理科教師であった鈴木氏の64年にわたる紅花研究の成果の一部を紹介します。