佳き日のために、職人の技の粋を結集した息をのむほどに美しい打掛の数々。その一領一領に込められているのは「願い」です。
色はもとより紋様・モチーフ・構図にいたっても深い意味を持っています。鳳凰、飛翔鶴、亀甲、御所車、松、四季の花々などは艶やかに、華やかに咲きほこるだけでなく、長寿、家運隆昌、吉祥、豊穣、生命の息吹、永遠の幸福を祈る気持ちの表れ。日本の美意識と儀式に対する思想や概念が丹念に織り込まれていることがわかります。
古い時代の打掛、いわゆるヴィンテージの打掛には一幅の絵のような世界観が広がっています。染め・繍い(刺繍)・織りの3つの技巧。匠の繊細な手仕事をぜひご覧ください。
本展は長年「打掛」の魅力を国内外に発信し続ける若槻せつ子コレクションから13点の打掛を展示し、そのあでやかな“絵画”でギャラリーを彩ります。
若槻せつ子/Setsuko Wakatsuki
ファッションディレクター 福島県出身、東京都在住。文化服装学院を卒業後、株式会社ジュンJ&Rや株式会社高島屋などのデザイナーを経て、1984年に「オフィスワカツキ」を設立。K I MONOドレスブランド「ローブ・ド・キモノ」を発表し、以来、多数の著名人の衣装提供を行う。また、アパレル業界やブライダル業界などのファッション顧問としても活躍し、弊社グループ会社である株式会社ポーラでは1991年から2001年までアパレルを扱う事業部の顧問として商品の企画・プロデュースを担当。
著書に「錦のしあわせ」、「錦の舞」(共にハースト婦人画報社)がある。