コプト裂はおよそ4世紀から7世紀にかけて、エジプトで織られた衣服などの文様部分をカットした織物です。つまり、正倉院宝物に伝わる古代裂よりもさらに古い時代の織物なのです。遠山記念館では、国内最大級の4792点のコプト裂を所蔵しています。1000点以上のコレクションをもつ美術館は、エジプトのカイロのコプト博物館ほか、ルーブル美術館、ニューヨークのメトロポリタン美術館などわずか6館にすぎません。本展ではコプト美術全盛期の作品を中心に100点を選び、それらの文様が何を表すのか、主題と象徴的意味を探ります。巧みな織り文様の意味を知るとともに、素朴でのどかな表現をお楽しみください。
主な作品の文様
- 組紐文様 : 組紐文 メアンダー
- 唐草文様 : 木蔦唐草、アカンサス唐草、葡萄唐草
- ギリシア神話: ディオニュソス、アフロディテとアドニス、アフロディテの誕生、ペルセウスとアンドロメダ、ケイロンとアキレウス
- キリスト教図像: キリスト降誕図
- 騎馬文様 、狩猟文様
- 十字架文様 : 十字架、アンク
- 動物文様: ライオン、豹、山犬、兎、鳩、水鳥、魚
展覧会の見どころ
2世紀末頃、エジプトにキリスト教が広まり、入信したエジプトの人々を「コプト」と呼びました。そのコプト人が織り、着装した麻と羊毛の綴織(つづれおり)を「コプト織」と呼びます。
エジプトの乾燥した気候が保存に適していたため、繊細な染織品を劣化させることなく、1500年以上前のコプト織が今日まで保存されたのです。コプト織は、もとは衣服や覆布、壁掛けなどでした。19世紀末以降に発掘され、美しい文様の部分だけが切り取られて、断片(裂)となりました。これを「コプト裂」と呼びます。織り出された文様にはナイル河畔の動植物が生き生きと写され、ギリシアの神々や英雄が躍動しています。さらに組紐文様や、キリスト教の図像も加わり、変化を見せながら流行しました。本展は、4~7世紀にかけてのコプト美術全盛期の作品を中心に100点を選び、それらの文様が何を表すのか、主題と象徴的意味を探ります。
巧みな織り文様の意味を知るとともに、素朴でのどかな表現をお楽しみいただけます。