友禅染は、絹地に模様を描き、染料で色挿しをしていく技法です。江戸時代に考案され、日本の装いを彩ってきました。
本展で紹介する寺澤森秋氏は、昭和21年(1946)に長野県長野市で生まれました。10歳の時に友禅染の細かな糊画に魅了され、19歳で上京し、日本橋の「中央染芸」で修業を積みました。26歳で独立し、板橋区弥生町に「弥生染芸」を設立して以降、数多くの作品を生み出してきました。
弟子時代には、昭和45年・46年の染芸展(青年部)に出品した作品が最高賞を受賞しました。独立後も同コンクールの本組合に作品を出し続け、作風を研究し、受賞を重ねており、昭和58年・59年・61年・62年には最高賞を連続受賞しました。
近年では、平成29年(2017)に「東京都優秀技能者(東京マイスター)」、令和元年(2019)に「卓越した技能者(現代の名工)」を受賞。令和4年には、業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を持つ方に授与される「黄綬褒章」を受章し、令和5年には「板橋区政功労者」として表彰されました。また、友禅染の教室を開き、技術の継承にも尽力しています。
本展では、友禅師である寺澤氏の昭和、平成、令和にわたる職人としてのあゆみを作品とともにご紹介いたします。寺澤氏の作り上げる魂が込められた友禅染の世界をご覧いただき、その魅力を感じていただく機会となれば幸いです。