八幡垣睦子は、欧米の伝統的なキルト技法を土台としながらも、日本の素材である江戸時代から昭和時代の古い染織品の小裂を、入念な構想のもとに、多い場合には数千枚も縫い合わせて花鳥風月など日本の伝統的モチーフを独自の感性で再現し、芸術性の高い作品に蘇らせています。
「後世へ伝承する一助になりたい」という八幡垣のことば通り、染織品の古裂が別の芸術品へと変容(メタモルフォーゼ)した彼女の作品には、古裂が既に内包する物語が継承されるとともに、作家の新たな思いも込められています。私たちはそれぞれの作品から、当ギャラリーのコンセプトに通ずる「古今の美意識が響きあう」複層的な物語に思いを馳せることができます。
八幡垣の創作活動は1990年頃から始まり、これまでに制作した作品は350点にのぼります。そのうち、本展では、大作を中心に、初期作品から最新作まで、彼女の多様なキルト芸術をご鑑賞いただきます。