「染司よしおか」は江戸時代から200年以上続く京都の染色工房です。日本に古くから伝わる植物染めの技法を用い、草木や花から美しい色を引き出し、麻、絹、木綿、和紙といった自然素材を染めることを生業としてきました。その四季折々の植物によって生み出される色彩には、自然への深い敬意と鋭い感性が息づいているかのようです。「染司よしおか」は古社寺との関わりも深く、伝統的な染色技法によって東大寺や薬師寺に収められる文化財の復元を行うほか、東大寺修二会に用いられる造花の椿を作るための和紙の染色を担うなど、伝統行事を支えてきました。
日本の染色の歴史は古く、植物を用いた染色は縄文時代までさかのぼります。奈良時代には大陸から本格的な技術が伝わり、より洗練された染色文化が育まれました。しかし、明治時代になると西洋から伝わった化学染料が急速に普及し、植物染めは衰退していきます。時代の変遷のなかで伝統的な技術が失われつつあることを危惧した五代目・吉岡幸雄は、植物染めを復活させ、「日本の伝統色」を現代によみがえらせました。
本展では、薬師寺の伎楽装束など古社寺の伝統行事にかかわる復元作品や『源氏物語』の衣裳の再現作品などを通して、「染司よしおか」の仕事をたどります。そして、その歩みを引継ぎ、植物染めによる色彩の美しさを探求しながら染色の新たな可能性を切り拓く六代目・吉岡更紗の取組みをご紹介いたします。
