服を着ることは人間の普遍的な営みのひとつです。そして装いには私たちの内なる欲望が潜み、憧れや熱狂、葛藤や矛盾を伴って表れることがあります。お気に入りの服を着たい、あの人のようになりたい、ありのままでいたい、我を忘れたい、……。着る人のさまざまな情熱や願望=「LOVE」を受け止める存在としてのファッション。そこには万華鏡のようにカラフルな世界が広がっています。

本展では、KCI が所蔵する18 世紀から現代までの衣装コレクションを中心に、人間の根源的な欲望を照射するアートとともに、ファッションとの関わりにみられるさまざまな「LOVE」のかたちについて考えます。展覧会を通して、私たち人間が服を着ることの意味について再び考えるきっかけとなるでしょう。

「着ること」の面白さや奥深さを再認識する展覧会

私たちは長い歴史の中で、着ることを通じてさまざまな情熱を傾けてきました。たとえば豊かさや権力の象徴とされ、18世紀には絹織物の文様にも現れた毛皮は、現在では動物保護をうたう一方でその手触りを手放すことのない、相反する価値観を含んでいます。本展では、KCIが厳選した18世紀から現代までの衣服作品を通じて、「着ること」をめぐる人々の多様な願望である「LOVE」とそのありようについて見つめ直します。

着る人や創作する人の「LOVE」に溢れた作品を多数展示

美しい花柄が広がる18世紀の宮廷服、いまにも動き出しそうな鳥たちがあしらわれた帽子、極端に細いウエストや膨れ上がった袖のドレス。歴史を振り返れば、過剰や奇抜と思える装いにこそ当時の人々の美意識が凝縮されています。現代のデザイナーも新たな形や意味を服に込め、私たちの日々の気分を切り替えるだけでなく、別の何かへと変身できるような感覚を与えます。デザインを極限までそぎ落としてミニマルな装いの記号へと還元するヘルムート・ラングや、ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』に触発され、時代や性別を超えた衣装で私たちの固定概念を揺さぶる川久保玲(コム・デ・ギャルソン)、コロナ禍、二度にわたる延期を乗り越えて発表されたジャン=ポール・ゴルチエとサカイのコラボレーションによるオートクチュール作品など。着る側と作る側それぞれの熱い「LOVE」から生み出された装いの数々が登場します。

服を着る「私」の存在とその認識を広げる現代アートを紹介

着るという行為は「私」という存在の輪郭にも働きかけます。本展では、さまざまな願望や葛藤を抱えながら現代を生きる多様な「私」のありようを、現在活躍するアーティストたちの作品を通して紹介します。身近な友人との日常を切り取り、ありのままに生きることを肯定するヴォルフガング・ティルマンスの写真、同世代の女性たちのインタビューを題材にその日常と内面を描き出す松川朋奈の絵画、背負う貝殻を変えるヤドカリの姿に人のアイデンティティを重ね合わせるAKI INOMATAの作品など、「私」をめぐる問いの現在形を探ります。

また本展には、朝吹真理子著『TIMELESS』、村田沙耶香著「素敵な素材」、岡崎京子作『へルタースケルター』など、「装う私」に渦巻く欲望の淀みが描かれた文学や漫画作品が挿話されています。それらを通して、行間に挟み込まれた「私の物語」と出会うこと。それは、衣服を着る私たちが自己を問い直すための「よりどころ」となるでしょう。

気鋭のデザイナーを起用した会場デザイン+展覧会カタログ

これまで KCI×MoMAK のファッション展では、藤本壮介氏や元木大輔氏などの建築家による、展覧会コンセプトに相応しいユニークな展示空間を実現してきました。今回の展覧会ではカタログと会場のグラフィック・デザインに岡﨑真理子氏、会場デザインにGROUPを起用。若手の新鮮な感性によるビジュアル・会場デザインにもご注目ください。

主な出展作品

ファッション

Alexander McQueen(アレクサンダー・マックイーン)、Balenciaga(クリストバル・バレンシアガ、デムナ・ヴァザリア)、Bottega Veneta( ダニエル・リー)、Céline(フィービー・ファイロ)、Chanel(ガブリエル・シャネル、カール・ラガーフェルド)、Christian Dior(クリスチャン・ディオール、ジョン・ガリアーノ)、Comme des Garçons(川久保玲)、Comme des Garçons Homme Plus(川久保玲)
Gaultier Paris by sacai、Givenchy(アレクサンダー・マックイーン)、Gucci(トム・フォード)、Helmut Lang(ヘルムート・ラング)、J. C. de Castelbajac(ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック)、Jil Sander(ラフ・シモンズ)、Junya Watanabe(渡辺淳弥)、Kostas Murkudis(コスタス・ムルクディス)、Loewe(ジョナサン・アンダーソン)、Louis Vuitton(マーク・ジェイコブス)、Madeleine Vionnet(マドレーヌ・ヴィオネ)、Maison Margiela(ジョン・ガリアーノ)、Mame Kurogouchi(黒河内真衣子)、Nensi Dojaka(ネンシ・ドジョカ)、Noir Kei Ninomiya(二宮啓)、Noritaka Tatehana(舘鼻則孝)、Pierre Balmain(ピエール・バルマン)、Prada(ミウッチャ・プラダ)、Ryunosukeokazaki(岡﨑龍之祐)、Somarta(廣川玉枝)、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)、Thierry Mugler(ティエリー・ミュグレー)、Tomo Koizumi(小泉智貴)、Viktor&Rolf(ヴィクター・ホスティン、ロルフ・スノラン)、Yohji Yamamoto(山本耀司)、Yoshio Kubo(久保嘉男)、Worth(ジャン= フィリップ・ウォルト)、ほか

アート

AKI INOMATA、ヴォルフガング・ティルマンス、小谷元彦、笠原恵実子、
澤田知子、シルヴィ・フルーリー、原田裕規、松川朋奈、横山奈美

会期:2024年09月13日(金)~2024年11月24日(日)

※会期や入場条件等が変更になる可能性があります。最新情報は公式サイトをご確認下さい。
⇒ 来場時の注意事項を確認する

入場料一般:1,700円(1,500円)、大学生:1,100円(900円)、高校生:600円(400円)
*( )内は前売と20名以上の団体料金
*中学生以下、母子・父子家庭の世帯員の方、心身に障がいのある方と付添者1名は無料(入館の際に証明できるものをご提示ください。)
*本料金でコレクション展もご覧いただけます。
*前売券は7月13日(土)–9月12日(木)までの限定販売。
開催時間10時~18時(金曜日は20時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休日 月曜日
※ただし9月23日(月・休)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館。翌日火曜日は休館。
主催者京都国立近代美術館、公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)
後援者文化庁、京都府、京都市、京都商工会議所、 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会、一般社団法人日本ボディファッション協会
詳細情報 展示の詳細情報を確認する

京都国立近代美術館

住所 〒606-8344
京都市左京区岡崎円勝寺町
入場料企画展の観覧料は各展覧会によって異なります。
尚、企画展の観覧券でコレクション・ギャラリーもご観覧いただけます。

一般  (当日)430円
大学生 (当日)130円
高校生、18歳未満、65歳以上 無料
開館時間通常時間
午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休日 月曜日(月曜日が休日に当たる場合は、翌日が休館)年末・年始、展示替期間の休館
*開館時間、休館日は臨時に変更する場合があります
公式サイト https://www.momak.go.jp/