日本文化と美意識を継承する、きもの。
平面の美と、身にまとう美が両立するきものの“ヒミツ”とは
日本文化と美意識を継承する、きもの。江戸時代半ば以降、繊細で華麗な表現ができる友禅染の技術によって、その意匠は豊かな発展を遂げました。
きものは、一定の幅の反物を直線縫いで仕立てるため非常に強い平面性をもつ一方で、施された多彩な意匠は、衣服として身にまとうことで立体性が生まれます。この平面と立体を行き来するところに、デザインされたものをはじめから立体裁断で制作していく洋服とは大きく異なるおもしろさがあります。
小袖と呼ばれたきものは桃山時代から江戸時代にかけて形式が整い、それを装飾するものとしてさまざまな意匠・模様構成が展開しました。幕末になるとパターン構成の形式化が進みますが、明治時代以降の京都においては日本画家の構想力や空間構成を活かした新たな染織図案が生み出され、斬新なデザインが次々と出現しました。こうしたきものの制作現場では、当時も現在も、平面に描いた下絵から染色図案になる過程で、着用して立体となることを想定した応用や調整の手が加えられてきました。ここに“きもののヒミツ”がひそんでいるのです。
本展は近世から近代のきものの優品や、近世の流行を支えた雛形本などの資料、さらに円山応挙から始まる京都画壇の展開と染織図案の関わり、図案を染織作品へと応用する過程、染織図案の流行がほかの工芸品と共有するものであったことも紹介。これまでにない視点から“きもののヒミツ”に迫ります。
第1章 平面と立体の間で きものと雛形本
近世のきものの優品や、きものの模様の見本帳である雛形本などの資料をご紹介します。
第2章 京都画壇の日本画と下図、染織図案
近世から受け継がれた伝統を基盤に、明治時代以降、京都において画家の染色下絵が友禅デザインに新風をもたらした様子をご覧いただきます。
第3章 図案から染織品へ 描かれた図案と染められた図案
平面である図案から、衣服として立体になるきものの生地に変換される過程を紹介します。また明治期以降の図案の流行や、流行の図案が染織品以外の工芸界で共有されていた様子もご覧いただきます。