遊牧民族の美しい針仕事と守りの銀細工

渋谷区立松濤美術館にて「中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―」が開幕しています。国内随一のウズベクとトルクメンの染織およびジュエリーコレクションを誇る広島県立美術館の所蔵品がまとまって他館で展示されるのは初めてだそうです。

中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―(渋谷区立松濤美術館)

展覧会はこれらの地域についての紹介から始まります。中央アジア諸国(現在のウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)はかつてのソビエト連邦領から独立した国々です。この地域はかつてシルクロードの中心として、多様な文化が交わる場所でした。

これまでどのような地域か知る人が少なかった国々ですが、近年、大阪・関西万博や漫画「乙嫁語り(森 薫)」などで各民族の特徴的な手仕事が美しいことが知られるようになりました。

見どころ1⃣ まずはこれをチェック!

森薫さんによる民族衣装解説の原画と拡大版が展示されています。本展関連書籍「中央アジアの華麗なる刺繡とジュエリー シルクロードの手仕事 広島県立美術館コレクションより」にも掲載されています。中央アジアの染織になじみがない方はまずこれをチェックしてみてください。この解説は広島県立美術館の資料を基に描かれています。実際の展示品の中から、同じものを探してみてくださいね。

(パネル『所蔵作品ミニガイド⑤』広島県立美術館)

見どころ2⃣ ガラスケース無しのスザニの針目をじっくり見たい

第1章は18世紀から20世紀の大判スザニが12点。スザニは現代のウズベキスタンを中心につくられた刺繍布で壁の装飾などに使われます。イスラム様式の美しい文様がシルクの甘撚糸で所狭しと独特のステッチで埋め尽くされています。スザニは日常的に使われていた布のため、綺麗に残っているものは少ないそうです。スザニの語源は「針」です。ぜひ、模様全体だけでなく針目まで観察してみてください。

スザニ刺繍の展示の様子
(中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー広島県立美術館コレクションより― 渋谷区立松濤美術館)
裏地もかわいいです!
(刺繍布 スザニ フェルガナ盆地 19世紀末期 広島県立美術館蔵)
部分部分に刺し手の個性が感じられます。
(刺繍布 スザニ カルシ:現ウズベキスタン 19世紀後半 広島県立美術館蔵)

見どころ3⃣ 民族衣装と装飾品はセットでチェック

トルクメン民族衣装の着装モデル(中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより― 渋谷区立松濤美術館)

展覧会のもう一つのテーマである「ジュエリー」。広島県立美術館は世界で有数のトルクメンジュエリーのコレクションがあります。

ジュエリーは着飾るための装飾品というだけでなく、悪いものから身を守るためのものであり、素材はイスラム教で清浄な素材と考えられている銀が多く、コーランの一節を収めるための筒や、シャラシャラと音のなる鈴飾りに加え、赤く光るカーネリアンなどの宝石もついています。身に着けると最重では15キロ以上にもなるとのこと。寝る時にも身につけたままというのは驚きますが、いざというときには身一つで逃げても財産を守ることができるとされています。

ジュエリーは単体で見ても美しいですが、ぜひ民族衣装と合わせて身につけているところを想像しながら見てみましょう。ウズベク人、トルクメン人の民族衣装はセットアップで展示されています。また、実際に身につけている写真も鑑賞してみてください。

(帽子 テルパク トルクメン人 広島県立美術館蔵)
(左から)男性用コート、女性用コート、子供用コート チャパン 広島県立美術館蔵)
(花嫁用頭飾り 北ヨムート族、トルクメン人 9世紀前半 広島県立美術館蔵)