日本のデザイン黎明期に、わが国の伝統的なパッケージの収集と研究を続け、「TSUTSUMU(包む)」という言葉とともに大きな足跡を残したデザイナー、岡秀行。木・竹・藁・土・紙―自然素材のパッケージに向けた岡の眼差しから見えてくる、「包む」ことに日本人が込めた想いや手わざの美を、当館所蔵の岡のコレクションによりご紹介します。

1972年に出版された写真集『包』(毎日新聞社刊)は、すでに絶版となっているものの、愛蔵書として今なお読み継がれています。この本の著者は岡秀行(おかひでゆき 1905ー1995)。岡は、戦前からアートディレクターとして活躍する一方で、木、竹、藁など自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、収集・研究を始め、藁の苞(つと)の素朴な美しさや、すし桶、菓子箱の職人技による伝統美に、日本人ならではの「美意識」と「心」を見いだし、「伝統パッケージ」と呼称を与え、書籍の出版や展覧会を通じて、高度経済成長期の日本において消えつつある技術や美があることの啓蒙につとめました。

1970年代半ばには、岡のコレクションは世界巡回展へと発展し、「TSUTSUMU」(包む)という言葉とともに大きな反響を呼びます。そして、このコレクションを日本の美術館で初めて本格的に紹介したのは、1988年に当館が開催した「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ展」でした。これを機に当館は出品されたパッケージ群を岡より譲り受け、「〈包む〉コレクション」として収蔵しています。本展は、2011年にその全容を紹介する展覧会を開催して以来、10年ぶりの展覧です。

「包むことについて考えるのは、人間の生活のすべてについて考えることに他ならない」。岡は前掲書の中でこのように述べています。そして、「私たちにとって、人間とは何か、生活とは何か、社会とは何かを考えることは、つまりは私たちのこの生をどう包むかという問題だとさえいえるだろう」と。

2021年の今、私たちは新型コロナウイルスの渦中にいます。新しい生活様式で暮らす中、身近なものへの関心や大切な人への想いなどが変化したように感じている方は多いのではないでしょうか。本展で展示するパッケージは、製造されてから30年以上が経ち、自然素材ゆえの色褪せや割れといった経年変化が見られます。しかし、この度の展示で、パッケージに向けられた岡のまなざしと、「包む」ことに込められた日本人の心や手わざの美しさを見つめることは、岡が言うように、私たちの生を考える良い機会と言えるのかもしれません。

会期:2021年07月13日(火)~2021年09月05日(日)

※会期や入場条件等が変更になる可能性があります。最新情報は公式サイトをご確認下さい。

入場料一 般 800(600)円
大高生・65歳以上 600(500)円
中学生以下 無料
*障がいのある方とその付添者1名は無料。
*(  )内は20名以上の団体料金。
*目黒区内在住、在勤、在学の方は、受付で証明書類をご提示頂くと団体料金になります。
*各種割引の併用はできません。
休日 月曜日 ただし、8月9日(月・休)は開館し、8月10日(火)は休館
詳細情報 展示の詳細情報を確認する

目黒区美術館

住所 〒153-0063
東京都目黒区目黒2丁目4−36
入場料観覧料は展覧会ごとに異なります。展覧会の情報をご覧ください。常設展示はございません。
開館時間10時~18時(入館は17時30分まで)
休日 月曜日(祝日・休日の場合はその翌日)
年末年始(12 月28 日~1 月4 日)
展示替期間
公式サイト https://mmat.jp/