この本は2024年04月から明治神宮ミュージアムで行われた展覧会「受け継がれし明治のドレス」で展示された明治の皇后がまとった一着の大礼服の誕生の物語と象徴的な意味、そして保存修復の過程で新たに見えてきた発見を追った一冊。御簾の中の高貴な女性が表舞台に立つために国内の職人に作らせた「初めての国産のドレス」にはどんな秘密やドラマがあったのでしょうか。
「昭憲皇太后大礼服服研究修復復元プロジェクト」の実行委員長でもあるモニカ・ベーテ氏の著作です。歴史的な背景から、修復・展示、資料集、美しい写真と内容も充実しています。
明治天皇の皇后で、のちに昭憲皇太后として知られる美子(はるこ)皇后(1849-1914)は、晩年にこの大礼服の長いトレインとボディスを大聖寺門跡に下賜しました。なぜだったのでしょうか。
日本で初めて本格的に国内で仕立てられた洋装大礼服を、皇后の生誕地であり製作されたと思われる場所へ戻す意図があったのでしょうか。バラ紋様を優美に織り出し、さらに金属刺繍で彩られたこのドレスは、果たして日本で製作されたものだったのでしょうか。
この大礼服は日本で近代憲法が制定された時期と同じ頃に仕立てられました。近代化を進める日本の成果を示し、皇后を西洋の王侯に並び立たせ、日本を国際舞台に示す象徴となりました。130年を経て、繊細な裂地は保存修復を必要とする状態となり、修復作業は思いがけない課題をもたらしました。そのために国際的な専門家が集い、自由な意見交換と協力によって取り組みが進められました。
本書の第一部では、大礼服が「誰によって、いつ、どこで」作られたのかを探る研究調査の成果を紹介し、皇后が国や人々(とりわけ女性)に、そして産業や外交に尽くした国母としての姿を描いています。第二部では、修復の過程と、そこで生まれた課題や創意あふれる解決方法について記しました。第三部には、年表や用語集、参考文献を収録しました。さらに保存修復や展示の過程で撮影された130点を超える画像を掲載し、豊富な写真とともに物語を読み進めることができます。
モニカ・ベーテ
染織史や日本伝統芸能について数多くの著書があり、神戸女学院大学、大谷大学教授を退任後、中世日本研究所所長をつとめている。長年、中世日本研究所において、尼門跡寺院関連の調査、研究、宝物の修復に携わってきた。また、「昭憲皇太后大礼服服研究修復復元プロジェクト」の実行委員長でもある。


