シリアを横断するメソポタミア文明を育んだユーフラテス川流域は、数々の古代文明が築かれました。その遺跡群が象徴するように古くから東西交通の要衝として栄え、染織の往来も盛んに行われていました。現在でも知られる「ダマスク織」の名からも、その長い歴史と、巧みな技術がうかがえます。

北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、南西側にレバノン、イスラエルとパレスチナ自治区、更に西部は地中海に面した国、シリア。この周辺国を含む西アジアの地域一帯は、砂漠や草原、高原、丘陵からなる極めて乾燥した気候です。この気候風土が文化の基層となって、人口の大多数を占めるイスラーム教徒の民族性とともに独自の染織品が作られました。

しかし、残念ながら2011年より長らく紛争下にあるシリアを取り巻く状況は、21世紀最大の人道危機ともいわれています。未だ出口の見えない戦禍の現実からは、これらの美しい手仕事を想起することすら難しい状況です。それでも、彼の地の人々が大地と共に暮らし、脈々と受け継いできた証が、今展に並べられる染織品です。手仕事の持つ普遍性に平和の願いを込めて。


アフガニスタンで古代ガラスを初めて見た時から、シリアという国は私にとって憧れの国でしかなかった。2000年8月、その想いを胸に訪れたが、描いていたシリアという響きと現実はかけ離れていた。しかし、古代より受け継がれたきた手仕事は細々と生き残り、現場を見ることができた。  国の豊かさということよりも、地味な生活の中で人々が築き上げた文化を見ていると、そういう中にこそ心惹かれるものがあり、染織品のようなものの中に目に見えない平等の力があると思った。陽のあたらない国こそ学ぶことがある。

岩立 広子

会期:2021年04月01日(木)~2021年07月10日(土)

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岩立フォークテキスタイル ミュージアム

住所 〒152-0035
東京都目黒区自由が丘1-25-13岩立ビル3F
入場料500円 [小中学生 無料、高大生 300円、障がい者とその同伴者 300円] 
*一般会員は無料、賛助会員は同伴者一名様まで無料
開館時間10時~17時 *入館は16時30分まで
開館日 【日時指定予約ありになりました】
会期中の木・金・土曜日
公式サイト http://www.iwatate-hiroko.com/