小豆あずき三粒包める布は捨てるな」と、古裂ふるぎれ一枚、くず糸一本無駄にせず再利用していた暮らしを想像できるでしょうか。破れれば幾重にもぎを当て、刺し縫いで補強した着物。布片を何枚もぎ合わせた布団皮ふとんがわ。擦り切れた木綿は細く裂き、短い残糸は繋いではたにかけ、再び布に蘇らせました。

こうした徹底したリサイクルやリユースの手間と工夫は、大量生産が浸透する以前、生活のあらゆる面で発揮されていました。念入りな補修の跡が残る菓子木型やそめ型紙のほか、酒や醤油しょうゆを購入する際に酒屋が貸し出した通い徳利などに、物を愛しみ長く使い続けることを美徳としたありようが見て取れます。木工品の副産物として考案されたの練物ねりものの人形や、反故ほご紙から生まれた張子はりこなど、廃棄する材料を用いて再生させた例もあります。金継ぎの技術はもはや修理の域を越え、物に新たなおもむきを加えるクリエイティブな行為にまで発展しました。近年では、つくろいを重ね何世代にもわたり着回した襤褸ぼろ(らんる)が、海外でもBOROとして脚光を浴びています。一方で、端裂はぎれには古来より人知の及ばない力が宿ると信じられ、布を寄せ集めぎ合わせて仕立てた着物に、幼子の幸せを託す風習が日本各地にありました。

湯浅八郎は「慎ましやかな生活が生んだものに、美しさがある驚き」*と、自らの愛蔵品のひとつである屑織くずおりの背景にある精神の豊かさを高く評価しました。物の価値は時代によって変わることがあるでしょう。しかしその尺度とは別のところに物の生命はあるのではないかと、資源を最後まで大切に使い切る先人たちの営みは問いかけてきます。

国連がSDGs(持続可能な開発目標)を採択して10年。物を尊びその寿命をまっとうさせることに心を砕いた手仕事の数々が、「サステナビリティ」の意識をさらに醸成するきっかけとなれば幸いです。

*湯浅八郎『民藝の心〔新装和英版〕』110ページ(教文館、2023年刊)

会期:2025年09月09日(火)~2025年11月07日(金)

※会期や入場条件等が変更になる可能性があります。最新情報は公式サイトをご確認下さい。

入場料無料
開催時間毎週火曜日、水曜日、木曜日、金曜日
* 9/21(日)、10/12(日)、10/13(月祝)の13時~17時は特別開館いたします。
休日 土曜・日曜・月曜・祝日・夏期休暇中・年末年始・展示準備期間(特別展開催期間外)
*10/14(火)は閉館いたします。(10/12・10/13の特別開館の振替休日)
詳細情報 展示の詳細情報を確認する

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館

住所 〒181-8585
東京都三鷹市大沢3丁目10−2
入場料無料
開館時間13~17 (最終入館:16時30分)
休日 土曜・日曜・月曜・祝日・夏期休暇中・年末年始・展示準備期間(特別展開催期間外)
* 特別展の開催期間外は閉館しております。常設展示(民芸・考古)もご覧いただけません。
開館日 毎週火曜日、水曜日、木曜日、金曜日
公式サイト https://subsites.icu.ac.jp/yuasa_museum/index.html