本展は、日本の様々な地域に残された「自然布」から、各地の風土と一体となった人々の暮らしや自然観、精神性をみつめ、人と自然とのこれからの関係について展望しようとするものです。日本古来の素材や手漉き和紙に関する研究を続けてきた「コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎」を招聘し、その独自の視点で選出された「自然布」と糸車や織機などの紡織用具、布の組織痕が残る縄文時代の土器片、そして「コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎」による手漉き和紙を用いた新作とパフォーマンス、撮り下ろしの映像や写真をご覧いただきます。
かつて人々は暮らしの身近にある草木から繊維を績み、布にして、衣服や暮らしの道具としていました。「自然布」とも呼ばれるそうした布は、生育に適した環境や繊維としての特性の異なる藤、葛、梶、楮、大麻、苧麻、榀、芭蕉、オヒョウなどで作られます。それゆえ生み出された地域それぞれに特徴的な暮らしの文化が色濃く反映されています。
繊維を取るところから全行程が手作業でなされる「自然布」づくりは、大変な根気を要すもので、その苦労は今日では想像もつかないほどです。貴重な布は尊ばれ、どの地域でも大切にされました。藤織がなされた島根では、ボロになった布は叩いて紙にし、最後まで無駄なく使ったとも伝えられます。
今日、自然と人間との関係は再考すべき段階になっています。
私たちは便利な暮らしの影で、自ら地球を汚し、住みにくい環境へと変えてきました。一方で、太陽の光を浴び、地球が生み出すエネルギーの恩恵を得て命を繋ぐ人の在り方はいつの時代も同じです。すぐそばにある自然に包まれながら、あるものを大切にして生きていた時代の布がいま、私たちに見せるのはどんなことでしょう。沢山の情報が溢れる現代において、「自然布」や手漉き和紙に宿る気配に、私たちが選び得る未来の姿の一つが映されているのかもしれません。原始の布とかみ、そしてそれらに共鳴して生み出された作品から未来を見つめます。
=======================================================
日、月、かみ、仏を尊ぶ言葉にノノがある
京都丹後の藤織りの里、上世屋では
かみから藤布の織り方を教わったという伝説がある
上世屋では藤織のことを親しみを込めてノノと呼ぶ
藤、葛、梶、楮、大麻、苧麻、榀、芭蕉、オヒョウ
人は草木から繊維を績み衣にした
地球の草木には、宇宙と地球の愛と叡智が内包されていて
私達は草木を布とし、纏うことによって
それらと一体となる感覚を身近に感じるものとしてきた
その働きは、無意識のうちに宇宙へと繋がり
人の意識はすべてと繋がってゆく
そこにノノが現れる
コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎
=========================================
COSMIC WONDER
1997年、 現代美術作家 前田征紀を主宰として設立。東京・南青山に「Center for COSMIC WONDER」を開設、活動と発表の拠点とする。
「精神に作用する波動」としての衣服、美術、書籍など多岐にわたる表現領域により展開。2016年より京都・美山の重要伝統的建造物群保存地区の古民家と工場跡を製作スタジオにする。
2015年「ミエルかみ」展(京都・gallery 白田)にて開催した「かみのひかりのあわ 水会」を皮切りに、工藝ぱんくす舎と共に作品制作・発表を開始。
2017年に「COSMIC WONDER 充溢する光」展(島根県石見美術館)、2019年に「COSMIC WONDER Harmonic Meditation」(香港・Taka Ishii Gallery)を開催。
工藝ぱんくす舎
前田征紀と工藝デザイナーの石井すみ子の生さいんの空間を創造する美術ユニット。
2015年「かみのひかりのあわ 水会」(京都・gallery 白田)、2016年「お水え いわみのかみとみず」展(島根県立石見美術館)、2017年「かみ」(銀座・資生堂ギャラリー)を発表。
手漉き和紙、自然布について独自の感性から研究を続けている。
==========================================