イネの茎を乾燥させた「稲わら」は、稲作をしている土地ならどこでも、米の副産物として昔はすぐ手に入りました。わらは、中が空洞になっているため保温性があり、身に着ける道具をはじめとして、断熱材や緩衝材・梱包材など、いろいろな用途や道具に使える“すぐれもの”。さらに使い終わって捨てる時には肥料として土に返すことができました。
また、身近な道具に使われる一方で、家々や地域に伝えられてきた神聖な祈りの場面にも、わらは欠かせないものでした。新しい稲わらで神様の祠を作ったり、新たな年を前にお正月用のしめ飾りを作ったり、毎年の収穫のたびにもたらされるわらは、新しい生命力を象徴し、神様に供えられる尊いものでもあったのです。
この展示では、身近にあったわら細工をもとにして生まれた、祈りの形としての様々なわら細工としめ飾りをご紹介します。展示資料から、精巧に作られたわらの手仕事の美しさもあわせて感じ取っていただければ幸いです。