テキスタイルデザイナー須藤玲子と、須藤が率いるテキスタイルデザイン・スタジオ「NUNO」の活動を紹介します。日本の伝統的な染織技術と現代の先端技術を組み合わせ、従来にない素材をテキスタイルに取り入れ、また産業の持続可能性にも目を向けるなど、テキスタイルデザインの分野において、NUNOは世界の第一線を走り続けてきました。本展では、日本各地の職人、工場との協働作業や、素材の可能性を広げるその取り組みについて、普段は見ることのできない布づくりの舞台裏を豊富な資料やマルチメディア・インスタレーションで展観します。NUNOの活動を包括的に伝える展示内容に加え、当館の空間を活かした大型インスタレーションを展開し、見る人の楽しい気持ちや好奇心をくすぐる、テキスタイルのもつ多彩な可能性に注目します。

本展「須藤玲子:NUNOの布づくり」は、2019年に香港のCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)で企画・開催され、その後ヨーロッパ各地を巡回しました。日本国内では丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に次いで、須藤とゆかりのある茨城県の水戸芸術館現代美術ギャラリーへと巡回します。

また、今展では、磯崎新設計の当館現代美術ギャラリーと広場で、人々に楽しい気持ちや好奇心を喚起する「こいのぼり」を展開します。大空間を泳ぐ、色とりどりのNUNOオリジナルテキスタイルを用いたインスタレーション「こいのぼり」。同作は、展示空間のデザイン等で国際的に知られるアドリアン・ガルデールによって考案され、これまでに東京の国立新美術館(2018年)、ワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ舞台芸術センター(2008年)、フランスのギメ東洋美術館(2014年)など世界各地で人々を魅了してきました。

本展に向け、須藤は、水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」の再生に取り組む水戸市内の職人とともに、特別なこいのぼりの制作にも取り組んでいます(制作協力:大谷屋染工場)。

さらに、水戸の街で特別な存在感を放つ水戸芸術館のシンボルタワーをモチーフに、須藤による磯崎新へのオマージュとしてデザインされた新作テキスタイルなど、当館ならではの展示をご覧いただけます。

須藤玲子(すどうれいこ)プロフィール

1953年茨城県石岡市生まれ。株式会社布代表。東京造形大学名誉教授。日本の伝統的な染織技術から現代の最先端技術を駆使し、新しいテキスタイルづくりをおこなう。作品はニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ロサンゼルスカウンティ美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、東京国立近代美術館など、世界の名だたるミュージアムに収蔵されている。2022年第11回円空大賞受賞。

本展の見どころ

1.テキスタイルデザイナー須藤玲子とNUNOの布づくりを包括的に伝える大規模個展

1983年テキスタイルデザイン・スタジオNUNOの設立に参加し、以来約40年間デザインディレクターとして創造性と実用性に富んだテキスタイルを生み出してきた須藤の活動は、その作品が美術館や博物館に収蔵されるなど、国内外で高く評価されています。本展では、須藤の代表作を通してその創作の姿勢を伝えるとともに、NUNOのテキスタイルを世に送り出してきた日本各地の工場にも焦点を当て、「布づくり」を支える創造的かつ技術的なプロセスを包括的に紹介します。

2.NUNOの布が「出来るまで」 舞台裏を大公開

完成したテキスタイルではなく、デザインの源泉や制作過程からテキスタイルデザインに注目する、画期的な展覧会です。テキスタイルの生産工程や開発プロセスを豊富な資料で詳らかにし、NUNOのテキスタイルデザインの全貌に迫ります。アイデアの着想源から原材料やドローイング、製作サンプル、職人との試行錯誤や生産の過程まで、普段見ることのできない布づくりの舞台裏を一挙公開。音や映像による演出で工場での生産の様子を再現したインスタレーションでは、「布づくり」のプロセスをハイライトし、臨場感をもって伝えます。

3.展示室・広場を自由に泳ぎ回る「こいのぼり」

大空間を泳ぐ、色とりどりのNUNOオリジナルテキスタイルを用いたインスタレーション「こいのぼり」。同作は、展示空間のデザイン等で国際的に知られるアドリアン・ガルデールによって考案され、これまでに東京の国立新美術館(2018年)、ワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ舞台芸術センター(2008年)、フランスのギメ東洋美術館(2014年)など世界各地で人々を魅了してきました。今展では、磯崎新設計の当館現代美術ギャラリーと広場で、人々に楽しい気持ちや好奇心を喚起する「こいのぼり」を展開します。また、本展に向け、水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」の再生に取り組む水戸市内の職人とともに、特別なこいのぼりの制作にも取り組んでいます。制作協力:大谷屋染工場

水戸黒とは:江戸初期、寛文年間から水戸藩に伝わる染色技法。藍の下地にヤシャブシで黒く染める「水戸黒」は、青みがかった独特の深みのある色合いが特徴的です。大正に入り化学染料の普及によってその継承が途絶えていましたが、1970年代以降、地元の人々の手によってその再現と継承が取り組まれています。

4. 磯崎新設計のシンボルタワーがテキスタイルに

水戸の街で特別な存在感を放つ磯崎新設計による美術館のシンボルタワー。今展では、須藤が磯崎へのオマージュとして、このタワーをモチーフにデザインした新作テキスタイルを初公開します。

会期:2024年02月17日(土)~2024年05月06日(月)

※会期や入場条件等が変更になる可能性があります。最新情報は公式サイトをご確認下さい。

詳細情報 展示の詳細情報を確認する

水戸芸術館 現代美術ギャラリー

住所 〒310-0063
茨城県水戸市五軒町1丁目6−8 水戸芸術館 1F
入場料一般900円
団体(20名以上) 700円
開館時間10:00~18:00(入場は17:30まで)
※ただし水戸市芸術祭「美術展覧会」は9:30から開館
休日 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)・年末年始
公式サイト https://www.arttowermito.or.jp/