野村コレクションとは、京都の美術商であり小袖を中心とする近世日本の衣裳の蒐集家でもあった野村正治郎(1880-1943)が築きあげた服飾品・装身具の一大コレクションです。小袖、衣桁にかかった小袖をかたどって貼装した「小袖雛形屛風」、袖形に装幀した小袖裂、櫛・簪などの髪飾り、筥迫・煙草入れなどの袋物等、その数は1000点を優に越えています。コレクションの大部分は国立歴史民俗博物館に収蔵されていますが、いくつかは国内外の各地に分蔵されており、また、散逸し行方知らずとなったものもあります。
今回展示する小袖裂を貼装した3点の2曲1隻屛風は、野村コレクションのうちに含まれ、近年新たに発見された資料です。2021年度に寄贈を受け、一般に公開するのは初めての機会となります。いずれにも裏面に野村賤男の印章があり、賤男が制作に関与したとわかります。賤男は旧姓を森下、ミドルネームをモリスといい、日系2世のアメリカ移民でしたが、1930年に正治郎の一人娘の政子と結婚し、野村家に婿入りしました。
本特集展示では、新出の3点の小袖裂貼装屛風を紹介するとともに、賤男の足跡をたどり、第二次世界大戦を挟む時期の日系アメリカ移民の活動についても見ていきます。