世界各地の営みの中で受け継がれてきた伝統的工芸の多くは、生活様式の変化、作り手の高齢化、後継者不足など、時代の移り変わりとともに様々な課題に直面しています。
『素材の源流を辿る』は、様々な課題に向き合いながらも、昔とかわらない原材料と伝統的な技術で作られる素材や作り手に目を向け、背景を理解するとともに文化として丁寧に伝えることで、共感や新たな価値の創出に繋がるような、ものづくりを紹介していく取り組みです。
「からむし」は、苧麻(ちょま)とも呼ばれるイラクサ科の多年草。少なくとも江戸時代より福島県昭和村で、からむしの栽培がおこなわれています。この村で作られるからむしの質は特に高く、「越後上布」「小千谷縮」などの最高級織物の原料として重宝されてきました。しかし、ライフスタイルの変化や過疎化により、代々受け継がれてきた技術を継承する人も少なくなっていきました。
歴史あるこの村でからむしをより多くの方々へ知ってもらう取り組みとしてスタートした「からむし織体験生『織姫・彦星』 事業」に応募し、からむしの営みに魅了され、その後も昭和村でからむしとともに暮らす、渡し舟 (渡辺悦子さん・舟木由貴子さん)の2人。昔ながらの方法で栽培から収穫、織りまで、季節の巡りに応じて植物と向きあうものづくりをおこなっています。
今展示は、『季節に根ざしたからむしの栽培』、『渡し舟ーからむしの営み』、そして『これからのからむしを探る』の3部構成です。
この展示を通して、伝統的技術から生まれる素材の素晴らしさとともに、渡し舟が綴る自然との営みを知ることで、これからの私たちの暮らしや社会について考えるきっかけになればと思います。
ATELIER MUJI GINZA