繰り返される日常の風景は止めどなく私たちの目の前を流れていきます。時間という軸の中で同じような光景が重なり変化していく様を私たちは無意識に記憶し、忘れていきます。染で使われる染料もまた、水の中で流れ、広がり、留まるという性質を もちます。流れいく日常を真摯に見つめ、その輪郭をなぞる視線の集積を染料という不安定な材料で描いたとき、そこに私たちを取り巻くほんとうの形が現れるのではないかと思うのです。
この展覧会の作品は、素材、手法、表現の形は様々ですが、作家それぞれが日々の身近な光景に目を凝らし、不安定な物事に自分なりの形をつけた作業の痕跡があります。みずみずしい感性で日常を切りとった個々のユニークな視点をご覧いただき、染 の可能性を感じていただければと思います。
最後に、新型コロナウイルス流行の前と後で私たちの日常は大きく変化しました。それまで当たり前と思っていたことがそうでは無くなる現実を目の当たりにし、平和に過ぎる一日の大切さを改めて感じています。この展覧会も一年延期をしましたが、 ここに無事開催できますことを心より感謝申し上げます。
ばんばまさえ 染色作家、本展監修者
参加作家
竹内まみ・友寄万梨奈・長谷川夏実・藤永覚耶・富士原史香・山下眞実・渡邊麻友子