西アフリカ・マリ共和国のバンディアガラ地方の高原と断崖地帯に暮らす農耕民「ドゴン」。彼らは砂漠化が進行する厳しい自然環境下で自給自足の生活を営み、数十年前までは文字とは無縁の世界に生きてきました。そんな現代科学との接触がない暮らしぶりにも関わらず、高度な宇宙観と世界観をもつ神話と、そこに源流をもつ豊かな精神文化を伝承してきました。「ドゴン」の人々には、深い天文学的知識に基づいたこれらの神話を大切にした、伝統的な仮面の儀礼があります。それは身体の芯を震わせる打楽器の演奏と、アクロバティックなダンスが一体となって、人間の誕生から死までのプロセスをダイナミックに描き出します。
また、「ドゴン」のファッション感覚や言葉としてのデザイン、装飾品は近代社会に生きる私たちに新鮮に伝わってきます。こうしたドゴンの文化は世界各地で大きな関心を集め、広く知れ渡るようになりました。本展ではドゴンの儀礼に使用する仮面、装飾品を中心に、染織・写真・映像などを交えて展示し、みなさんをドゴンの世界に誘いたいと思います。