豊富なコレクションの中から、広島出身の洋画家・南薫造や中央アジアのスザニなど、広島県立美術館を代表する名品群を紹介。併せて、縮景園築庭400年を記念した特集も行います。
第4展示室では『中央アジアの刺繍~スザニ #乙嫁たちの手仕事』をテーマにシルクロードの中心部、中央アジアの刺繍や民族衣装の世界をご紹介します。
旧ソ連領中央アジアは、東に中国の新疆ウイグル自治区、西にカスピ海、南にインドやイラン、北にロシアが位置する地域で、1991年のソ連崩壊とともにウズベキスタンなど5つの国が独立しました。この地域は、刺繍や絨毯などの染織制作が盛んに行われ、ジュエリーや木工、陶芸やガラスなどの多彩な工芸が花開いた地でもあります。
広島県立美術館は中央アジアの染織品と金工品、ジュエリーの大規模なコレクション約900件所蔵しており、国内最大にして国際的にも優れたコレクションとして知られています。
今回の主役はスザニと呼ばれる刺繍布です。スザニは女の子が幼い頃から準備を始め、嫁入りの際には数枚から十数枚のスザニを持参しました。一族の女性たちが木綿布に絹糸でびっしりと刺繍した、豊かな感性と色彩感覚で作られたスザニは世界中で愛されています。今回は岡山県立美術館所蔵のスザニを交え、よりバラエティに富んだスザニが並んでいます。当地では、数多くある民族ごとに民族衣装や装身具の様式が異なり、着用者の所属する民族や既婚未婚といった社会的立場を表現しました。
19世紀の中央アジアを舞台にした『乙嫁語り』連載中の人気漫画家・森薫氏が当館のために描いたイラストとともに、漫画の舞台となった中央アジアの手仕事の風景をご覧いただきたいです。