植物から人々の手を介して幾度となく色合いを変える神秘的な藍
世界中の人々を魅了してやまない藍色。
藍は、その色彩のバリエーションとともに、植物から人々の手を介して幾度となく色合いを変える過程に、神秘的な美しさと不思議がつまっています。
この展覧会では、自然の恵みを生かして藍染料を作り出す人々の技に着目し、世界各地の製藍技法と染織文化を紹介するとともに、沖縄で古くから行われてきた沈殿藍の製法とその背景、さらに「沖縄の藍」から生まれた選りすぐりの染織品を展示し、藍の魅力を存分に楽しんでいただきます。
第1章 藍染料とは?
緑色の植物から藍色を染め出すなんて誰が編み出したのでしょうか?
藍の色素を含む植物(含藍(がんあい)植物)のうち、世界中で利用されている植物の種類や分布、植物から染料になるまでのプロセス、できあがった藍染料や製藍に使う材料等についてご紹介します。
第2章 世界の製藍技法と染織文化
藍染めは、アフリカからヨーロッパ、アジア、アメリカまで世界中にありますが、それぞれの地域で使う植物や製法は多種多様です。
「ジャパンブルー」といわれる日本の藍もまた、沖縄の藍とは異なる植物や製法で作られます。
第2章では世界各地の製藍技法と染織品を通して、世界と日本の藍文化を広くご紹介します。
第3章 沖縄の製藍の技
沖縄の製藍で主に使われる植物は、リュウキュウアイとコマツナギ属のアイ。両者は各々生育に適した環境で栽培されています。
リュウキュウアイは山間の半影地を好むので沖縄本島北部を中心に、コマツナギ属のアイは、平地の畑で直射日光にあたって育つので、宮古・八重山地方や沖縄本島南部でよく栽培されています。
第3章ではリュウキュウアイを利用してきた沖縄の製藍業について、藍壺の遺構や聞き取り調査、文献史料から得た情報をもとに歴史と技術を紐解きます。
第4章 藍の製造者(エーヌジャー)の横顔
良質な藍染料を産み出す決め手は、良いアイ葉と藍を作る人(エーヌジャー)が経験で培ってきた技です。
藍染料を産み出す過程では、良いアイ葉を育て、葉を漬け込んだ後の発酵具合の見極め、分離した発酵液に投入する石灰の量、撹拌(かくはん)時間、といった製造者の「勘所」がカギとなります。
第4章では藍作りの技を守り伝えてきた人びとについてご紹介します。
第5章 沖縄の藍染めの用と美
沖縄では古くから紅型や芭蕉布、琉球絣、宮古上布、読谷山花織等、あらゆる伝統染織に藍染料が使われてきました。
第5章では、黒朝衣や藍型(えーがた)衣裳、筒描きの大型幕、宮古上布や琉球絣の逸品から、普段の生活の中の着衣、風呂敷や手ぬぐい(ティサージ)等、さまざまな藍染めの作品にスポットを当て、沖縄の藍染め文化を見つめてみます。
エピローグ~沖縄の藍づくりの未来図~
沖縄の藍は、伝統染織には欠かせない染料として作り続けられる一方で、現代社会のニーズ沿ってTシャツやジーンズ、洗髪剤等にも使われています。
エピローグでは県内の新しい産業や海外の事例等を通して、沖縄の藍の未来像を考えてみます。