内容紹介
本書はモンゴル国に居住するカザフ人の文化と刺しゅう技法を紹介するものです。
現在、モンゴル国には約10万人のカザフ人が暮らしています。彼らは現在のカザフスタンにあたるカザフ草原から移住した遊牧民の子孫です。彼らはモンゴル国の西部地域にて、カザフの民族文化を守りつつ暮らしています。
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カザフ人が受け継いできた文化のひとつに、装飾文化があります。彼らは天幕型住居(ユルタ/ウイ)の内部を満たすように熱心に飾ります。彼らにとって「家」は「家族」と過ごす大切な空間。カザフ人は天幕型住居内部で使う家具に、刺しゅうや織りなどの技法によって美しい装飾をほどこします。
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本書でご紹介するカザフ刺しゅうはそうした装飾技術のひとつです。この技法は主に壁掛けを作るための技法として用いられてきました。カザフ刺しゅうでは道具としてかぎ針と木枠を使用します。こうした刺しゅう技法はカザフに限らず、キルギスやウズベクなど中央アジアの他の民族の間でもおこなわれています。本書ではかぎ針を使った刺しゅう方法を、プロセス写真付きで解説しています。
本書のみどころは、まず模様図案の豊富さにあります。本書に掲載した刺しゅう見本はカザフの伝統文様をもとにアイナグル氏が独自のアレンジを加えて作った本書だけのオリジナル。大小さまざまなサイズの模様をご紹介しています。
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また、モンゴル国のカザフ人の間で作られてきた壁掛け「トゥス・キーズ」の作品の写真を多数掲載。1950年代に作られたビンテージものから現在のものまで、時代の変遷を感じつつ、トゥス・キーズに関する解説付きでお楽しみいただけます。
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さらに、カザフ刺繍を身近に取り入れるアイディアとして、アイナグル氏が製作した作品集とその図案を掲載。見ていると作りたくなってくるような可愛らしい鞄やお洋服など、盛り沢山でご紹介しています。
(写真はすべて廣田千恵子氏による撮影です)
著者からのメッセージ
本書は中央アジアのデザイン・モチーフを詰め込んだ日本初のカザフ刺しゅうの教則本です。教則本ではありますが、実際に刺しゅうをしない方でも文様集としてお楽しみいただけるように、たくさんの図案を掲載しています。また、刺しゅう技法を受け継いできたカザフの人たちの顔や草原での暮らしぶりが伝わるように、現地写真も豊富に載せています。 空と大地のはざまで力強く、そして心優しく生きる人々の姿を、ぜひお手に取ってご覧ください。(廣田 千恵子)