内容紹介
この絵本はチェコ共和国で2020年10月に出版され、同年のチェコ・グランド・デザイン最優秀イラストレーター賞を受賞しました。日本とチェコに共通する伝統技法、藍染めの美しさと継承の大切さを伝える作品になっています。
村のはずれの小さなおうちで、藍染め工房を営むおじいさんとおばあさんには悩み事がありました。代々受け継いできた藍染めの技を伝える跡取りがいなかったのです。ある日曜日の散歩道、ふたりは森ですっかり汚れた赤毛のお人形を見つけます。不思議なことに、綺麗に洗ってもらったお人形は、一夜明けると、お腹を空かせた女の子に姿を変えました。「光の少女」を意味する「アポレンカ」と名付けられた少女は、おじいさんとおばあさんの愛情を受けすくすくと育ち、藍染めの仕事をたちまち気に入ります。そしておじいさんの工房で宇宙のように深い青色の藍をたたえた甕をのぞいたその時、自分の使命を悟り、藍染めがこの世から消えてしまわないように、藍染めの伝統を守ろうと心に決めるのでした。地域の人々に愛されながら、何世代にもわたって受け継がれ、守られてきた藍染めの伝統と技の精神を美しい水彩のイラストレーションとともに伝える物語です。
本書は、小学校5年生以上が対象になっていますが、大人にも楽しんでいただけるものです。あとがきはもっと日本とチェコの藍染めについて知りたい人のために、日本語版の訳者が日本の読者向けに書き下ろしたものです。絵本の原作者、イラストレーター及び作品の解説付き。原書の装丁を忠実に再現した箔押し背継クロス装の『藍染めのアポレンカ』Special Editionも300部限定で販売中です。
翻訳者からのメッセージ
本書は世界中で愛されてきた藍の青い色と職人の技をうやまう心が絵本という形に結実したものです。チェコで出版された原書を初めて目にしたとき、イラストレーションの美しい藍染めの藍の色と質感の表現に目を奪われ、心が震えました。子供にもわかりやすい、独特なリズムのチェコ語で紡がれた物語を平易で、また正確な日本語におきかえるため、日本の紺屋や染工場を訪れ、職人さんの仕事を拝見し、お話も聞かせていただきました。日本語版をお読みくださるみなさまにも、この心震える体験が届きますように祈っています。(小川 里枝:ヴィオルカ)