明治以降、日本の「国民」として同化政策がとられてきたアイヌ民族。文化や言語の多様性は、近代的な国家形成の前に立ち塞がる障壁の一つとされ、「国語」が創出されてゆく明治30年代には、既に民族固有の文化は衰微の一途を辿っていた。後に本学教授となる言語学者の金田一京助が、失われつつあったアイヌ民族の言葉や習俗の記録に取り組み始めたのは、このような時代 の出来事である。その後も、金田一の教え子であった久保寺逸彦がアイヌ口承文芸の採集と研究を進めるなど、初期のアイヌ文化研究において國學院大學の関係者が果たしてきた役割は大きい。
同展は、2019年の「アイヌ新法」成立と、2020年の国立アイヌ民族博物館開館、そして本年の金田一・久保寺没後50年を受けて、当館が所蔵するアイヌ民族関連資料や、本学北海道短期大学部が所管する金田一記念文庫に収蔵された 貴重書を、図書館所蔵資料とともに紹介する。