今、なぜ「民藝」に注目が集まっているのでしょうか。「暮らし」を豊かにデザインすることに人々の関心が向かっているからなのか。それとも、日本にまだ残されている地方色や伝統的な手仕事に対する興味からなのか。いずれにせよ、およそ100年も前に柳宗悦、濱田庄司、河井寬次郎が作り出した新しい美の概念が、今なお人々を触発し続けているのは驚くべきことです。
柳宗悦の没後60年に開催される本展覧会は、柳らが蒐集した陶磁器、染織、木工、蓑、ざるなどの暮らしの道具類や大津絵といった民画のコレクションとともに出版物、写真、映像などの同時代資料を展示し、総点数450点を超える作品と資料を通して、時代とともに変化し続けた民藝の試みを俯瞰的な視点からとらえなおします。
今回とりわけ注目するのは、「美術館」「出版」「流通」という三本柱を掲げた民藝のモダンな「編集」手法と、それぞれの地方の人・モノ・情報をつないで協働した民藝のローカルなネットワークです。民藝の実践は、美しい「モノ」の蒐集にとどまらず、新作民藝の生産から流通までの仕組み作り、あるいは農村地方の生活改善といった社会の問題提起、衣食住の提案、景観保存にまで広がりました。「近代」の終焉が語られて久しい今、持続可能な社会や暮らしとはどのようなものか―「既にある地域資源」を発見し、人・モノ・情報の関係を編みなおしてきた民藝運動の可能性を「近代美術館」という場から見つめなおします。
テキスタイルの展示品
※会期中一部の展示替えがあります。展示期間欄のマークの意味は以下の通りです。
◐→前期展示:2021年10月26日 ~ 2021年12月19日
◑→後期展示:2021年12月21日 ~ 2022年2月13日
作品番号 | 作品・資料名 | 制作年代 | 作者名 | 産地(現在の県名・地方) | 所蔵者 | 展示期間 |
2_34 | 丹波布夜具地 | 江戸~明治時代19世紀 | 丹波(兵庫県) | 日本民藝館 | ◐ | |
2_35 | 丹波布夜具地 | 江戸~明治時代19世紀 | 丹波(兵庫県) | 日本民藝館 | ◑ | |
2_37 | 東こぎん肩布 | 明治時代19世紀後半 | 青森県南津軽郡 | 日本民藝館 | ||
2_56 | マフラー | 1929年頃 | エセル・メイレ | イギリス | 日本民藝館 | ◑ |
2_57 | マフラー | 1929年頃 | エセル・メイレ | イギリス | 日本民藝館 | ◐ |
3_57 | 裂織敷物 | 昭和初期 | 青田五良 | アサヒビール大山崎山荘美術館 | ◐ | |
3_58 | 裂織敷物 | 1930年頃 | 青田五良 | アサヒビール大山崎山荘美術館 | ◑ | |
4_24 | 茶地縞ジャケット(柳宗悦着用) | 昭和中期 | 及川全三 | 岩手県盛岡市 | 日本民藝館 | |
4_25 | 作務衣(濱田庄司着用) | 公益財団法人 濱田庄司記念益子参考館 | ◐ | |||
4_26 | 台湾麻袋(濱田庄司所持品) | 公益財団法人 濱田庄司記念益子参考館 | ||||
4_27 | ツイードスーツ(河井寬次郎着用) | 河井寬次郎記念館 | ◑ | |||
4_48 | 丹波布夜具地 | 江戸~明治時代19世紀 | 丹波(兵庫県) | 日本民藝館 | ◐ | |
4_49 | 丹波布夜具地 | 江戸~明治時代19世紀 | 丹波(兵庫県) | 日本民藝館 | ◑ | |
4_50 | 屑糸織やたら縞裂 | 明治時代19世紀 | 日本民藝館 | ◐ | ||
4_51 | 屑糸織裂 | 明治時代19世紀 | 日本民藝館 | ◑ | ||
4_52 | 東こぎん衣裳 | 明治時代19世紀後半 | 青森県南津軽郡 | 日本民藝館 | ||
4_53 | オヒョウ地切伏刺繍衣裳 | 19世紀 | 樺太アイヌ | 日本民藝館 | ◐ | |
4_54 | オヒョウ縞地切伏刺繍衣裳 | 19世紀 | 北海道アイヌ | 日本民藝館 | ◑ | |
4_55 | 白地手花手巾 | 19世紀後半~20世紀初期 | 読谷(沖縄県) | 日本民藝館 | ◐ | |
4_56 | 紺地手花手巾 | 19世紀後半~20世紀初期 | 読谷(沖縄県) | 日本民藝館 | ◐ | |
4_57 | 白地手花手巾 | 19世紀後半~20世紀初期 | 読谷(沖縄県) | 日本民藝館 | ◑ | |
4_58 | 紺地手花手巾 | 19世紀後半~20世紀初期 | 読谷(沖縄県) | 日本民藝館 | ◑ | |
4_59 | 袖無長衣 | 19世紀 | サイシャット族 | 台湾 | 日本民藝館 | ◐ |
4_60 | 袖無長衣 | 19世紀 | サイシャット族 | 台湾 | 日本民藝館 | ◑ |
4_61 | 『工藝』第6号[丹波布] | 1931年6月 | 国立新美術館 | |||
4_62 | 『工藝』第14号[津軽の「刺しこぎん」] | 1932年2月 | 国立新美術館 | |||
4_63 | 『工藝』第49号[琉球の染織] | 1935年1月 | 国立新美術館 | |||
4_64 | 『工藝』第113号[琉球「てさあじ」] | 1943年7月 | 国立新美術館 | |||
4_71 | 白地網文様鞠散し革羽織 | 江戸時代18世紀 | 日本民藝館 | |||
4_85 | 柳宗悦 表装裂コレクション | 日本民藝館 | ||||
4_107 | ににぐりネクタイ[デザイン指導:吉田璋也] | 1931年[デザイン] | 向国安処女会ほか(鳥取県) | 鳥取民藝美術館 | ||
4_108 | ツイードスーツ、ににぐりネクタイ、懐中時計提げ紐、竹製ショルダーバッグ(吉田璋也着用) | 個人蔵 | ||||
5_28 | 文化映画「琉球の民藝」監修:柳宗悦、式場隆三郎、音楽:柳兼子、山内伶晃、企画:日本民藝協会 製作会社:大日本文化映画製作所 | 1939年 | 日本民藝館 | |||
5_29 | 白地牡丹尾長鳥菖蒲流水文様紅型衣裳 | 琉球王国時代19世紀 | 琉球(沖縄県) | 日本民藝館 | ◐ | |
5_30 | 茶地朱入り経縞に絣衣装 | 琉球王国時代19世紀 | 琉球(沖縄県) | 日本民藝館 | ◑ | |
5_31 | 琉球織物見本(白地経緯絣裂|紺地手縞裂)[蒐集:田中俊雄] | 沖縄県 | 日本民藝館 | |||
5_32 | 田中俊雄、田中玲子『沖縄織物裂地の研究』明治書房 | 1952年 | 日本民藝館 | |||
5_33 | 波に帆舟文様紅型型紙[蒐集:濱田庄司] | 琉球王国時代19世紀 | 琉球(沖縄県) | 日本民藝館 | ||
5_34 | 柳宗悦編、田中俊雄著『琉球の織物』日本民藝協会[表紙布:外村吉之介、題字:芹沢銈介] | 1939年 | 日本民藝館 | |||
5_35 | 柳宗悦『芭蕉布物語』(私版本)[装幀:柳宗悦、表紙装案:鈴木繁男] | 1943年 | 日本民藝館 | |||
5_36 | 沖縄絵図 | 1939年 | 芹沢銈介 | 日本民藝館 | ◐ | |
5_37 | 紺地紋入熨斗柳文様紅型風呂敷 | 琉球王国時代19世紀 | 琉球(沖縄県) | 日本民藝館 | ◑ | |
5_67 | 藁手袋 | 1940年頃 | 山形県 | 日本民藝館 | ||
5_68 | 雪兜 | 1940年 | 山形県 | 日本民藝館 | ||
5_69 | 蓑(伊達げら) | 1930年代 | 青森県北津軽郡 | 日本民藝館 | ||
5_70 | 背中当(ばんどり) | 1939年 | 山形県庄内地方 | 日本民藝館 | ||
5_78 | 木綿切伏衣裳 | 19世紀 | 北海道アイヌ | 日本民藝館 | ◐ | |
5_79 | 木綿切伏衣裳 | 19世紀 | 樺太アイヌ | 日本民藝館 | ◑ | |
5_85 | 刀掛け帯 | 19世紀 | 北海道アイヌ | 日本民藝館 | ||
5_86 | 刀掛け帯 | 19世紀 | 北海道アイヌ | 日本民藝館 | ||
5_87 | 刀掛け帯 | 19世紀 | 北海道アイヌ | 日本民藝館 | ||
5_88 | 『工藝』第106号[アイヌの織物] | 1941年12月 | 国立新美術館 | |||
5_90 | 杉山寿栄男『アイヌ藝術 第一巻 服装篇』第一青年社[装幀:杉山寿栄男、型染:芹沢銈介] | 1941年 | 日本民藝館 | |||
5_111 | 長衣 | 19世紀 | タイヤル族 | 台湾 | 日本民藝館 | ◐ |
5_112 | 上着 | 19世紀 | パイワン族 | 台湾 | 日本民藝館 | ◐ |
5_113 | 上着 | 19世紀 | パイワン族 | 台湾 | 日本民藝館 | ◑ |
5_114 | たっつけ袴 | 19世紀 | パイワン族 | 台湾 | 日本民藝館 | ◑ |