芭蕉布とは亜熱帯を中心に分布する植物・芭蕉からとれる天然繊維を原料とした、沖縄を代表する織物です。第二次世界大戦後に消滅しかけた伝統技法を復興させ、現代へ繋いだ女性こそが平良敏子です。その功績により、2000 年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。本展では沖縄本土復帰50 周年に寄せ、平良敏子の情熱と、彼女が本島北部の小さな村・喜如嘉キジョカに設けた工房で紡がれる手仕事をご紹介いたします。民藝運動の主唱者・柳宗悦に「今時こんな美しい布はめったにないのです。いつ見てもこの布ばかりは本物です」と言わしめた手織物の数々を約70 点にわたり公開いたします。芭蕉の糸が織りなす透けるような風合い、沖縄特有の力強い色彩、バラエティに富んだ絣柄の世界をはじめとする芭蕉布の魅力をお楽しみください。
本展のみどころ
戦後から現代にいたる約70作品を一挙公開
本展では、平良敏子と友部(ドゥシビー)こと盟友たちが、喜如嘉の芭蕉布織物工房で戦後から現在までの間に手がけてきた約70点(一部作品の展示替を含む)の作品を一堂に公開いたします。これまで工房に眠っていた秘蔵作品や、琉球王朝時代の装束を再現した貴重な作品などもご覧いただけます。民藝運動の主唱者・柳宗悦が「今時こんな美しい布はめったにないのです。いつ見てもこの布ばかりは本物です」と綴った『芭蕉布物語』の直筆原稿と初版本を併せて出品いたします。
喜如嘉の芭蕉布が持つバリエーションを存分に
喜如嘉の芭蕉布は伝統的な作り方を守る一方、その意匠においては進化を続けてきました。染色や織りの妙で表現する色彩の幅広さ。一言に茶色、紺地などといっても、そのバリエーションが多岐に渡ることを感じていただけます。絣柄についても同様に、シンプルで愛らしい柄から覗き込みたくなるような複雑な経緯絣の柄、時代を経て洗練された瀟洒なデザインの着物まで、存分にご紹介いたします。
想像を超える精緻な手仕事を知る
平良敏子が復興させた畑で糸芭蕉の栽培から始まる芭蕉布作りは、1点を仕上げるのに詳細に分ければ約30もの地道な工程と、途方もない時間、マンパワーの集結であるといえます。本展では来館者へ制作工程を解説した手元資料を配布し、作品と併せてご覧いただきます。また、芭蕉糸の実物や工房で使用されている道具類等も展示。平良と信頼を結び、高い技術でクオリティーを支える喜如嘉の友部(ドゥシビー)たちの存在も感じていただければ幸いです。