この秋100歳を迎える柚木沙弥郎は、“つくること”が生活の一部であるように、現在も日々制作と向き合っています。「型染」に、独創的な表現を加えた豊潤な色彩による作品は、これまで多くの人々を魅了してきました。80歳を超えてからは、海外で紹介される機会も増え、新たな境地を獲得し「布」から「作品」へ、より自由な飛躍を遂げたアーティストとしての活躍は年齢を感じさせません。
柚木にはもう一つ、教育者としての顔があります。今年で73年を迎える、女子美術大学の工芸科の設立に参画、長きにわたって学生の指導に努めました。そのユニークな教え方により、今も多くの卒業生に慕われています。本展では、柚木沙弥郎の「創作」に加え、女子美工芸において展開された「教育」にもフォーカスをあて、「注染」や「型紙防染」という柚木が得意とした技法や、こだわり続けた素材についてなど、普段取り上げられることの少ないテーマからの構成を試みました。常に学生と共にあった女子美術大学において、柚木作品の魅力をご覧いただきます。