本展は、当館所蔵の民俗資料コレクションによって編集した書籍『民具のデザイン図鑑』(誠文堂新光社、2022年10月12日発売)をもとにした展覧会です。民具は、特定の設計者が考案するのではなく、人々の暮らしの現場において理にかなった造形として生み出されます。そして生活が変化するのにともない、その造形も常に変化してきました。そうした民具に対して、次の三つの視点を設定します。
① 日常的な労働や身の丈にあった生活に即した造形〈かたちと身体性〉
② デフォルメされた造形が意味を生み出し、共有する造形〈ユーモアと図案〉
③ 自然に宿る精霊や神仏を表現し、その霊性を暗示する造形〈見立てと表象〉
民具は、現代から見れば過去の庶民生活を知ることのできる民俗資料ですが、上記の見方でその造形を考えることで、わたしたちの生活や自然観、世界観と地続きなものとして再考することができます。本展では、民具が持つ豊かな造形の発想に新たな価値を見いだし、ユーモアと見立ての造形にまなぶことで、美術大学における民俗資料の可能性を考える機会としたいと思います。(展示資料約50点)