人の手で染めるという行為とその手仕事で染められた布の美しさや奥ゆかしさを存分に共有し合える場を目指し設立された「SQUARE 染 textile」。10回展となる本展では52名の作家を迎え、同じサイズのスクエア画面の中、多彩な手法で制作した作品を展示します。
たかが「染み」されど「染み」 1940 ~ 50 年代フランスのアンフォルメルの一潮流にタシスム Tachisme がある。 タシスムは「染み、汚れ」を意味する「タッシュ(tache 仏)」に由来、叙情的抽象として、クールな幾何学的抽象に対する反動といわれ、CoBrA や、「流し」を展開した元永定正など具体グループとも関係、アメリカ現代美術のドリッピング、ポーリング、ステイニングなどへと展開した。それまで欧米の造形には「染み・にじみ・流れ・むら・ぼかし」はほとんどみられなかったので、「染み」に着目した表現は斬新だった。 逆に日本では染色はもちろん、絵画においても調墨、たらしこみ、筋目描き、ぼかしなど「染み」を巧みにコントロール、活用してきた。日本は「染み」大国だと私は考えている。 現代絵画において、イメージは写し再現するバーチャルなものだけではなく、制作のプロセスで生まれるリアルなものと考えはじめると、素材の質quality への新たな関心により、偶然や必然の表情をいかしたイメージを構築しようと、コラージュやタッシュをはじめ革新的な手法が次々と展開されるようになった。 偶然や必然、自然からのイメージ構築は、日本の工芸が得意としてきたものだ。そのためには、あらゆる素材を熟知し、道具を開発、技術を錬磨した職人芸ほど有効なものはない。「工芸」というより「造形表現の媒体」として考えると、油絵に比較して、染色にはじつに豊かな素材・技法・道具があることに気づく。布と染料をもちいた表現には、伝統の叡智に支えられた、広大な可能性がひらけている。 10回展をむかえるという「SQUARE 染 textile 10」では、多彩な出品者の試みにより「造形表現の主流は染色にあり」との充実ぶりをみせてくれるものと期待したい。----- 福本 繁樹(染色家)
「10 回展を迎えるにあたって」 本展覧会は、伝統工芸、現代美術、テキスタイルデザイン等の各分野で活躍する作家同士が交流し、新たな発想の種を培いながら、日本の豊かな手仕事の発展の一助となることを目的としています。純粋に人の手で染めるという行為とその手仕事で染められた布の美しさや奥ゆかしさを存分に共有し合える場を目指し、年に一回の展覧会を継続してまいりました。会の趣旨に賛同いただいた皆さまに支えられお陰様でこの度、SQUARE 染 textile 展は10回目の展覧会を迎えます。今回は特別企画展として美術大学の協力による学生作品も含め総勢52 名の作家をご紹介します。 〈SQUARE〉という名の通り、同じ規格の正方形のパネルに染めた布を張った作品にすることで染めのテクニックや素材の違いの面白さ、様々な表現方法に着目しご鑑賞いただけるのではないかと考えています。これまでのSQUARE 染 textile の活動の集大成として作り手と鑑賞者が互いに触発し合い、新たな創出の場となれば幸いです。----- SQUARE 染 textile 実行委員会
10周年特別イベント
トークショー 奄美大島泥染 金井志人氏「息づく色」
日時:2024年 3月 20 日(水) 16:00~
触れる布展示
出品作品の質感を体感できる「触れる布」の過去作品と今回作品合わせて200点あまりを一挙に公開。
出品作家による小品販売
選抜学生展示